Lesson13-1 パン業界の現状

Lesson13ではパン屋の開業の基礎部分について解説します。
本講座でパンの知識を手に入れた方の中には、パン屋として店を開きたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。

今や、町中にあふれかえるほど存在するパン屋。
人気店になるためには様々な視点からの工夫が必要です。

今回のセクションではまず、パン業界全体の現状について学びましょう。

主食としてのパン

米が主食である日本ですが、今やパンも米と並ぶほどの消費量を占めています。
平成23年の総務省の調査では、日本の一般家庭でのパンの消費額は米を上回ったとされています。
この背景としては、若年層の米離れ、朝食にパンを食べることの習慣化や、核家族の影響による孤食などが理由として考えられています。

数年前までは小麦の価格も高騰していましたが、今では価格も落ち着き、パン業界の安定につながっています。

2006年のパンの生産量は約121万7000t。
国民1人当たりの年間消費量は9.5Kgにまで到達しています。

パン全体の生産量は、1980年以降安定的に推移していきますが、種類別に見ると、食パンは1980年頃をピークに減少し、1997年以降はほぼ横ばいとなっています。
また学校給食のパンは1970年頃から現在に至るまで少しずつ減少しています。

菓子パン・総菜パンの力

1980年代頃から、日本ではライフスタイルの変化が目まぐるしく訪れます。
女性の社会進出が進み、核家族化・それに伴う孤食の増加や高齢者の一人暮らしなど、様々なシーンで手軽に食べられる菓子パン・総菜パンの需要が高まりました。

前項で述べたように、食パンの生産量は下降の一途をたどる一方で、菓子パン・総菜パンは生産量を伸ばしていきました。
この時代からパン業界は、菓子パン・総菜パンに底上げされて成長してきたといえるでしょう。

フレッシュベーカリーの登場

1980年ごろまでのパン市場は、山崎製パンなどの大手メーカー4社が生産量の60%を占める寡占業態となっていました。
スーパーやコンビニなどで独自の販売ルートを持ち、大量生産・大量販売で規模を拡大してきたのです。

しかし、そんなパン業界に「フレッシュベーカリー」という新たな風が吹き込みます。
フレッシュベーカリーは、「焼き立て」を売りにしており、スーパーやショッピングセンターでその勢力を拡大してきました。
今では、オリジナルの焼き立てパンを提供するこのようなパン屋を多くのスーパーなどで見かけることができます。

海外進出がキーポイント

近年のパン業界は、米離れや小麦価格の安定などの外部要因に支えられることで、何とか横ばい状態をキープしています。

そんな中、日本のパンメーカーの海外進出についてはどうでしょうか。
パン業界大手である山崎製パンやフジパングループ本社の海外売上高比率は10%未満
第一屋製パン、日糧製パンの海外での売上高は0というように、海外進出については非常に消極的な姿勢をとっていることがわかります。

この数値は、グローバル化が進む現代ではあまりに低いものです。
日本は今後人口減少が見込まれていますので、パン業界全体の売上高減少も必然といえるでしょう。
そんな中、いかにして海外での売り上げを確保するのか、ということが今後のパン業界成長のキーポイントだといえるでしょう。